持続的成長のキーワード:組織開発
企業では、組織に関連する様々な問題点を抱えていることが少なくありません。
「経営戦略を立案する方法がわからない」
「現状の組織の有りようではダメなことは判っているが、どこから手をつけて良いのかわからない」
といったものから
「いくら制度を見直しても離職率が下がらない」
「明確なビジョンのもと、的確に経営環境を分析して戦略を立案したのに目標の達成ができない」
「より良いと思われる組織体制への変更を行ったのに不協和音が鳴り止まない」
などという悩みを抱えている企業もあります。
これらの問題を解決する方法として組織開発があります。
私たち事務所では、この組織開発を重視しており、クライアントである企業の皆様とともに、より良い組織体制の構築にあたります。
1、 組織開発とは
組織開発(OD = Organization Development)とは、会社など同じ組織で働く人々の関係性を高め、組織を活性化させる取り組みのことです。
現代のビジネス環境は急速に変化しており、競争が激化しています。
グローバル化、技術革新、市場の不確実性などの要素が組織に影響を与えています。
このような状況下では、組織は柔軟性と適応力を持つことが重要であり、組織開発はそのニーズに応える手段として注目されています。
その最も重要なカギとなる要素は組織のメンバーです。
メンバーのモチベーションや貢献意欲が高まると、生産性や創造性が向上し、組織全体の成果に繋がります。
組織開発は、メンバーの参加や関与を促進し、従業員の満足度や働きやすさを向上させることで、人材の力を最大限に引き出すことを目指します。
加えて、個人の能力だけでなくチームの能力やコラボレーションの重要性が増しています。
組織開発は、チームワークや協力関係を強化するための手法を提供し、組織内のコラボレーションを促進します。
特に、異なる専門分野やバックグラウンドを持つメンバーが協力する必要があるプロジェクトなどでは、組織開発が重要な役割を果たします。
また上記のことに付随し組織開発は、単なる経済的な成功だけでなく持続可能な成長と社会的責任を追求する視点を持っています。
最近注目を集めているDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン→詳しくはこちら)を実現しようとする努力なしには、メンバーの強固な結びつきはできませんし変化への対応力の強化もできません。
利益を追求するだけでなく、社会的な価値や環境への配慮も考慮すれば「企業」「メンバー」「社会」の結びつきが強固なものとなり、より組織の活性化につながります。
2、 組織開発の目的
組織開発の目的は、組織全体の効率性や生産性を向上させることです。具体的な目的は以下の6つです。
- 組織の目標設定と達成能力の最大化
組織の適切な目標の設定と達成するための能力を最大化できます。
組織構造、プロセスや文化などを改善することで、目標達成のための土台を整えます。 - 組織内のコミュニケーションと協力関係の強化
効果的なコミュニケーションは情報の共有や意思決定の円滑化に貢献し、チームや部門間の協力関係の強化は効率性と生産性の向上につながります。 - 組織文化の形成と価値観の共有
組織の文化は、組織メンバーの行動や意思決定に大きな影響を与えます。組織開発は、組織の理念や価値観を明確化し、共有することで、一貫性のある組織文化の醸成を図ります。 - 従業員の関与促進によるパフォーマンスの向上
組織開発は、従業員の参加と関与を促進することで、組織のパフォーマンスを向上させます。従業員が組織の改善に参加することで、従業員満足度やモチベーションが向上し、組織全体の成果に貢献します。 - 変化への適応
組織は常に環境や市場の変化に直面しており、柔軟性と迅速な対応が求められます。
そのために組織開発の手法を通じて、変化を受け入れ必要な調整や改善を行う能力を獲得することにより硬直的な組織から柔軟性のある組織へと転換できます。 - 続可能な成長と社会的責任を追求
DE&Iなどの社会的課題の解決に取り組むことで組織活性を図ります。
3、 組織開発の方法
私たちは組織開発の支援をおこなう際、マッキンゼーの7Sというフレームワームを用いてクライアントである企業の組織的な課題を分析・抽出してより良い状態にできるようにします。
マッキンゼーの7Sとは
マッキンゼーの7Sとは
世界的に有名なコンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した組織改革のフレームワークです。
ハード面である
戦略(Strategy):企業理念の実現に向けた競争優位性を確立するための経営戦略
組織(Structure):組織構造や事業部制組織などの組織形態
システム(System):人事・報酬制度、IT等の情報システムや予算・財務管理など組織の仕組み
の3つと
ソフト面である
スキル(Skill):営業力、技術力、マーケティング力など組織に備わっている能力
スタイル(Style):社風や、組織の文化
人材(Staff):社員や経営者など個々の人材の能力
の3つと、7Sの要諦とされる
共有された価値観(Shared Value):社員で共有されている会社の価値観
をあわせた4つで構成されています。
ハード面の3つの要素はロジカルに構築しやすいため、認識も容易で比較的短期間で取り組む事ができます。
一方、ソフト面の4つの要素は価値観や技術など曖昧な要素で構成されているため、ロジカルに構築しにくい(=認識されにくい)です。
そのうえ、人や集団の心理の関わりによって慣性が働くことで変更に時間がかかる傾向にあります。
しかし、これら7つの要素をバランスよく調整しなければ、組織改革をスムーズに進めることはできません。
7Sの各要素へのアプローチ方法
それでは、7Sの各要素へのアプローチ方法を解説していきます。
- 戦略(Strategy)
-
- 企業の価値観の再構築
戦略の基準となるミッションや自社のビジョンを確認して、企業の価値観を明確にします。
ミッションとは使命のことです。
企業の価値観により、企業の経営を通じて社会で何を実現したいのか、どんな課題を解決したいのかを確認します。
ミッションと呼べるものがない場合でも、企業理念や創業時の想いなどから、企業の目指すべき姿に光を当てます。
そのミッションを実現するために、ビジョンに基づいた施策を立てます。
ビジョンとは、展望のことです。
経営者が企業の将来をどのように見据え、どのような成果や状態を実現したいのかを示すものです。企業が追求すべき方向性を明確にし、意思決定や戦略策定の基盤となります。
この価値観の再構築は7Sの要諦である共有の価値観(Shared Value)と密接に結びついるため、熟慮が必要です。 - 経営環境分析
PEST分析(→詳しくはこちら)により外部環境を読み取り、それに基づいて
SWOT分析(→詳しくはこちら)
5フォース分析(→詳しくはこちら)
VRIO分析(→詳しくはこちら)
などのフレームワークを用いて内外の経営環境を整理します。 - 戦略の立案
外部・内部の経営環境の分析から明らかになった強みを活かすための具体的な戦術、手段を決めていきます。
その際に重要なのは最初に定めた企業の目的を念頭に置くことです。
一見、画期的で素晴らしい戦略でも、目的と乖離してしまうとミッションを実現できません。ビジネスの目的を明らかにしたら、その目的やビジョンを軸に優先順位を決め、経営リソースを活用するための事業計画を策定します。
- 企業の価値観の再構築
- 組織(Structure)
-
組織(Structure)は組織図に表されるような組織の形態、構造のことです。「階層は深いのかフラットなのか」や「指揮命令系統が明確であるか」などです。
組織構造は一般的に、仕事の種類や目的によって部署を分ける機能別組織(→詳しくはこちら)事業部ごとに裁量権を持っている事業部制組織(→詳しくはこちら)プロジェクトごとにチームを作るマトリクス組織などの体制があります。
各企業において最良の組織体制は違うため、それぞれの企業にあった体制を選びます。 - システム(System)
-
システムは、社内の情報システムのようなITインフラに加えて、予算管理、目標管理制度などの仕組みのことです。
また、人事考課や給与体系なども含まれます。
明文化された業務マニュアルやルールも含め様々なものがありますが、これらのシステムが機能しているか、不必要なものや改善すべきものがないなどを分析します。スキル(Skill)
スキルとは、組織として優れている技術を指しますが、プログラミング・データ解析のスキル、販売力、技術力やマーケティング力だけではなく、コミュニケーション能力、リーダーシップや問題解決のためのイノベーティブな能力など、企業に所属するメンバーが持つ明文化されていない知識も含まれます。
この個々人の持つ名文化されていない知識をSECIモデル(セキモデル→詳しくはこちら)により、組織全体のスキルへと転換できるよう私たちは取り組んでいきます。
企業風土(Style)
企業風土は、組織の文化、や行動パターンなどを指します。
以下の3つの特徴が、組織の慣習や行動に影響を与えると考えられます。
1、組織文化
組織内で形成される共有の信念、価値観、慣行が組織文化としてスタイル要素に含まれます。組織の文化は、従業員の行動や意思決定に影響を与え、組織のアイデンティティや働き方を特徴づけます。例えば、協力やチームワークを重視する文化、顧客志向を重視する文化や革新を奨励する文化、などがあります。
余談になりますが、日本の企業文化においては、一般的には安全性やリスク回避が重視される傾向があります。
このような傾向は、日本のビジネス環境や社会的背景、法律・規制、教育システム、倫理観などの要素に影響を受けており、安全性の追求は顧客への品質保証や労働者の安全確保、社会的責任の遵守など、重要な価値観として位置づけられています。
日本企業はそのような文化的な傾向があるため、内部留保を増やして安全性の追求に力を入れることが多いです。
しかし、リスクをとることは新たなビジネスチャンスを追求し、成長を実現するために必要です。
リスクを取ることで競争力を高め、イノベーションや新しい市場への進出など、企業の成長と発展につながる可能性があります。
したがって、日本の企業文化においても、安全性とリスクのバランスを取ることが重要です。
過度な安全性から脱却し、チャンスや成長のために適切なリスクを受け入れ、積極的なイノベーションや変革に取り組まなければ緩やかな衰退にもつながりかねません。
2、倫理観
組織内で重視される倫理的な原則がスタイル要素に含まれます。組織の倫理観は、組織全体の行動基準や意思決定に影響を与えます。例えば、透明性や公正さ、社会的責任、持続可能性などが重視される場合があります。
3、行動パターン
組織内の従業員やリーダーの行動パターンがスタイル要素に含まれます。
これは組織のルールや慣習、コミュニケーションのスタイル、意思決定のプロセスなどの具体的な行動に関連します。
組織内で望まれる行動パターンや組織の期待に一致しているかどうかが重要です。
これらの要素が組織内で一貫して存在し、組織の目標や戦略と調和していることが重要です。
スタイル要素は組織の個性を形成し、組織内の人々の行動や意思決定に影響を与えます。
組織開発の観点では、組織のスタイルを明確にし、必要な場合は変革や改善を行い、組織のパフォーマンスや目標達成を支援します。
また、先に述べたDE&Iも企業風土と深い関わりがありますので、DE&Iを定着させる教育や施策を実施します。
人材(Staff)
人材とは、組織内の人的資源、能力、経験、配置などを包括的に捉えた要素です。
組織のメンバーが持つリーダーシップ、専門知識、技能、経験の豊富さや多様性が、組織の成功に影響を与えます。
組織は人材を育成することで、目標達成に向けた能力を確保します。
その方法などは、人材開発(→ページはこちら)で述べます。
また、組織内でのメンバーの役割や責任の配置が、組織の効率性や生産性に影響を与えますので適切な人員配置が重要ですので、必要に応じて見直しを行います。
共有の価値観(Shared value)
私たちは共有の価値観=ブランドだと考えています。
共有の価値観の「価値観」とは、組織内で共有される信念、原則、ビジョン、ミッションなどの核となる考え方を指します。
これは組織の行動や意思決定の基盤となり、組織のアイデンティティや文化を形成します。
ハードの3Sである戦略(Strategy)の『1.企業の価値観の再構築』で述べたとおり、組織のビジョンは、将来の目標や理想的な状態を表し、ミッションは組織の存在意義や目的を示します。これらのビジョンとミッションは、価値観の基盤となります。
詳細はブランディング(→ページはこちら)で述べますが、ブランドの機能は、この価値観を外部に解りやすい形にして拡張したものであるといえます。
価値観を共有する事は、組織のメンバーが共通の目標や方向性を持ち、一致した行動をとることを促進します。
また、共有の価値観は、メンバーの行動や判断に影響を与えるため、組織のパフォーマンスや成功に重要な役割を果たします。